こんにちは。
芦屋の司法書士事務所「カルマリーガルオフィス」職員の中村です。
今日は実務でもかなり増えてきている信託の登記について勉強していきます。
実務と連動して司法書士本試験でも出題数としては増加傾向にあると思います。
僕が受験した平成26年の本試験でも確か記述の問題で信託の登記が出題されていましたね。
記述では初めての出題だったので登記簿を見たときにめちゃくちゃ動揺してしまい今年はもう終わったなと思った記憶があります。
ま、本当に終わってしまいましたが笑

さて受験生にとって信託の登記でまず重要なのは単独申請、非課税てところですかね。

信託とは、
委託者の財産を受託者に名義上は移転させるけれど実際には権利は移ってはいない

というところがポイントなんですね。
実際に権利は移っていないからこそ非課税だし、受託者に財産を運用・管理してもらうからこそ単独申請が幅広く認められます。

まず所有権を信託した場合だと、

登記の目的は「所有権移転及び信託」となります。
信託の部分については単独申請ですが所有権の部分については共同申請という混合型なんですね。
そのため添付書類として登記識別情報や義務者の印鑑証明書が必要になります。

また所有権移転については非課税ですが信託の部分については1000分の4の登録免許税がかかります。
これが仮登記だと1000分の2、抵当権信託(セキュリティ・トラスト)だと債権額の1000分の2、仮登記だと1000分の1、と受験生としてはここまで押さえておきたいところです。

さらに最近では実務上の要請から自己信託というのもけっこう見かけるようになりました。
委託者と受託者が同じというケースですね。
これに関しても登記では単独申請を認めていますがやはり要件は厳しくなります。
単独申請なのに添付書類として印鑑証明書、登記識別情報などが必要になりますね。

信託というのは自分の持っている財産(不動産、動産、預貯金など)を誰かに預託して運用・管理してもらう、
つまり自身の財産から切り離してしまう制度です。

自己信託の場合このような手続きを自分ひとりでしてしまうのですから当然要件は厳しいわけです。
また信託された財産は強制執行ができなくなることもありますからね。

次に信託の変更ですね。受験知識として重要なのは受託者の任務が終了して変更するケースです。
受託者の終了事由としては死亡、後見や保佐開始の審判、破産、法人の解散、辞任、解任などがあります。

ここで問題になるのがまたしても申請構造ですね。
新たに選任された新受託者と旧受託者の共同申請なのか新受託者だけの単独申請でよいのか。

旧受託者の死亡、後見、保佐開始、破産、解散のケースでは新受託者の単独申請が認められます。

覚えるコツとしては理由をしっかり頭に入れておいて知識をおさえていくことです。
ただ闇雲に覚えにかかっても必ず抜けてしまいます。

死亡→死者は登記できません。
後見、保佐開始→登記は少し大変だと思います。
破産→登記に協力してくれるかな。

これに対して辞任したケースでは共同申請になります。
何らかの事情で辞めることはよくありますし、旧受託者にも登記に関与させるんですね。
さらに「単なる解任」についても共同申請になります。
これについては覚えるしかありませんね。
解任されてるのに登記に関与させるんかとツッコミたくなるところですが。

「単なる解任」としているのは裁判で受託者が解任された場合は嘱託の登記になるので注意しましょう。

さて受験生としてはこの辺まで押さえておきたいところです。

最後に問題になるのが信託の終了ですね。

受託者が第三者に売却するケースでは所有権移転と信託の抹消の同時申請です。

普通に所有権移転については共同申請ですし登録免許税も1000分の20とられます。

信託の終了段階で一番重要なポイントは信託財産を受託者がお金を払って買い取るケースですね。

いわゆる「固有財産となった旨」の登記です。
これついての登録免許税は普通に1000分の20と1000円(信託抹消分)とられます。
はじめに受託者に権利移転するときに非課税だったので、今回受託者に実質権利を移転させる登記には税金を払えというものです。

さらに重要なのは共同申請なのに登記識別情報がいらないということですね。

なぜ必要ないかというとここでの義務者は受益者だからです。
受益者は登記名義人にはなってないので登記識別情報を持っていません。
提供のしようがありませんね。

まだ多少の論点は残っていますがそれはまたの機会にしておきましょう。
とにかく信託の分野は申請構造、登録免許税がポイントになりますのでがんばってください。