こんにちは。芦屋市の司法書士事務所「カルマリーガルオフィス」の中村です。
今日は共有持分について勉強していきましょう。
受験時代は個人的にはけっこう好きな論点でした。
登記法に限っていえばそれほど論点も多くなく、難解な問題が作りにくい分野だからだと思います。
まずは共有のイメージから。
共有とは観念的なものですね。
たとえばA土地をaとbで2分の1ずつで共有しているということは
A土地のどの部分をとってもaのもであり、またbのものでもあるといえますね。
また共有状態とはどのような権利についても発生します。
たとえば、賃借権、地上権、抵当権、など所有権以外の権利についても共有という状態は発生しますね。
では持分が登記事項になるのかどうかについて確認しましょう。
本試験でも頻出の論点なので瞬時の判断ができるようにしておきたいところです。
まずは共有or権利者複数なのに持分を記載しないケースとして以下の知識です。
①差し押さえ
②元本確定前の根抵当権
③信託の受託者
④地役権で要役地の権利者
①はそもそも権利ではないため持分が観念できません。
②は確定前の根抵当はまだ被担保債権が不確定な状態なので持分は記載しません。
(これが抵当権ならば債権が準共有の場合、持分は記載されます。)
③は信託財産は合有となるため持分は観念できません。
④そもそも承役地に要役地の権利者は登記されない。
次に不分割特約です。
これは以前の申請構造のところの内容でも少し触れましたが、合同申請、付記登記、などさまざまな論点で関わってくるので重要ですね。
もうひとつ踏み込んでみると所有権移転の登記と特約の一括申請が認められるかとういう問題ですかね。
少し事例形式で見ていきます。
事例①
A所有の不動産を2分の1だけBに売ると同時に不分割特約を締結した場合、
所有権一部移転の登記と不分割特約の登記を1通の申請書で申請できるでしょうか。
事例②
これに対してA所有の不動産を2分の1ずつBとCに売ると同時にBとCで不分割特約を締結したケースではどうでしょうか。
①は一括申請できますが②はできませんね。
ポイントは不分割特約の当事者になっているかどうかです。
①の場合、AとBはそれぞれ売買契約の当事者でもあり、特約の当事者でもありますね。
この場合、所有権一部移転の申請書に特約の登記も盛り込んでOKです。
権利者 持分2分の1B
義務者 A
といった具合になります。
②の場合は売買契約の当事者はA、B、Cですが特約の当事者はB、CなのでAは特約の当事者に入っていません。なので1通の申請書では表記できないことになります。
ただ闇雲に覚えるのではなく必ず理由を付した上で頭に入れておきましょう。
次に共有者の持分放棄、共有物分割の論点です。放棄や分割の登記をする前に他の共有者が名変や住所変更をしていれば前提としての名変、住所変更の登記がいりますね。
これはなぜかというと共有物分割や持分放棄で権利を手に入れることになる権利者は必ず前提として登記簿上の共有者でなければならないからです。
順を追って説明しましょう。
1番 2分の1 A
2番 2分の1 B(住所 大阪市)
この事例においてAが自分の持分を放棄したとしてその2分の1の権利を取得するのは登記簿上のBです。しかし仮にBが名前をXに変更していたとすればどうなるでしょうか。
登記簿上、3番で2分の1 Xとして記録されます。
しかし原因は持分の放棄となっています。
持分放棄で権利を取得するのは2番名義の共有者BのはずなのにXが取得するのはオカシイと登記上は判断されますね。Bが住所変更していた場合でも同じことが言えます。
よって前提としての名変、住所変更の登記は必要です。
他の論点として共有者の1人に抵当権が設定されている場合は「共有者全員持分全部移転」と記載できないケースなどもありましたね。
記述でも申請件数に影響しくるところなので必ずチェックしおきましょう。