こんちは。新人職員の中村です。
今週は不動産登記法の重要論点でもあります農地法所定の許可が必要かどうかについて解説していきます。
近年の試験では個数問題として出題されることが多く受験生としては落とすことのできない問題でもあります。
とはいえ知識がそのまま点数になる分野でもあるのでしっかり押さえておきましょう。
まず、前提として許可は農地の使用形態や所有者が変更されるときに必要になるものです
では許可がいるのかいらないのかを検討していきましょう。
売買や地上権、賃借権設定はもちろん必要です。
これは農地を使用するのが誰であるかが大切だからですね。
農地の使用者が変わるのは大きな問題です。
ところが相続や遺産分割、遺留分減殺、合併や会社分割だといりません。
売買と相続では同じように所有権が移転するので法的効果は同じですが原因が異なります。
ここを説明すると憲法の話にさかのぼります。日本国憲法は立法、行政、司法という3つの権力機関が互いに役割分担をしながら鼎立することを基礎としています。
お互いの権限については不介入の考え方が原則です。
相続については民法の条文に定められています。よって所有者が亡くなれば当然に相続人に承継されます。
この司法府が定めた法律に行政府が待ったをかけることはできないんですね。三権分立に反してしまいますからね。
他にも時効による所有権移転や持分放棄についても民法により物権が移転することが定められているので農地法の許可は必要ありません。
これに対して共有物分割は共有者間の意思に基づいて行われる取引行為に近いものがあるため許可が必要です。
次に相続分の譲渡は共同相続人を相手にしていれば不要ですが第三者に対してであれば許可は必要です。共同相続人を相手にしていればそれはただの相続と変わりないからだといえますね。
遺贈は包括か特定かで分かれます。
包括遺贈であれば許可はいりません。
ところが特定遺贈は第三者へのものであれば許可が必要ですね。
死因贈与についてはいつかにお話した遺贈とは異なり、契約行為になるので許可は必要です。(当事者の意思が入っていますからね)
この辺の農地法の許可の必要性の有無については記憶のために理由も大切ですが覚えていれば点になるのでがんばりましょう。
財産分与については協議離婚なら必要ですが裁判離婚ならばもちろん不要です。
(裁判所カラんでますからね)
権利能力なき社団の代表者が変更したときの委任の終了のときは必要ありませんが委任契約における民法646条2項による移転ならば必要です。
権利能力なき社団の代表者変更ケースでは名義上は変更していますが実質の権利者は変更していませんからね。
次に真正な登記名義の回復ついて見ていきます。
1.A
2.売買B
3.真正回復X
上記の事例でXへの真正回復の登記に許可証は必要です。
新たに登記名義人になる人Xが本当に農地を取得しても問題ないかを行政が判断します。
では誰からXへの許可証が必要かというとこれはAからXへの許可証が必要です。
実体としてはAからBへの売買は間違いで実はAからXへの売買でしたということなのでそこの物権変動に対して許可がいります。
こんなのはいかがでしょうか。
1.A
2.相続B
3.真正回復X
上記の場合はXへの真正回復には許可は必要ありません。
これはAからBへの移転原因は相続であり、その登記に誤りがあり実はXが相続人だったということです。続登記に許可は不要ですからね。
農地の問題で失点するとすれば形式に惑わされるケースかもしれません。
登記記録問題形式で許可がいるかいらないかを問われたときはよーく登記原因まで注意しましょう。
担保権についても見ておきましょう。
抵当権設定では許可は必要ないです。
抵当権は使用収益する権利ではないですからね。
では質権についてはどうでしょうか。
不動産質権はけっこう面白い権利です。
担保権なのに質権者は目的物を使用、収益できてしまいます。
これは不動産質権に用益権的性質があるという大きな特徴です。(特約で排除可能です)
この特徴から多くの点で他の担保物件との違いが出てきます。
民法でも抵当権とは異なり利息については最後の2年分という縛りがなく利息がまるまるもらえます。
また保全仮登記でも抹消できるかできないかで違いがありました。
さらに民事執行法では消除主義のところで他の担保権との違いがありました。
このように一つの視点で科目全体を横断的に見渡してみるのも非常に効果がありますのでぜひやってみてください。
で話を農地に戻しますが、やはり原則使用収益する権利なので許可は必要ということになります。
あと少し残っていますがまたの機会にしておきます。